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      研究開発リーダーの参考書08

      SCM(サプライチェーンマネージメント)のキーは開発にあり

         イタリアの有名なアパレルメーカーに「ベネトン」という会社があります。
        今日は、ベネトンの「セーター」と「SCM」のお話しです。

        この業界は斬新なデザインの商品を次々と市場に投入して熾烈な競争を
        行っていますが、最も当たり外れの大きいのが「色」だそうです。

        セーターの製造工程は、毛糸を染め、編んで、商品を配送するというのが
        大まかな手順です。
        市場からの反応を見ながら生産を行うわけですが、
        今年は「ワインレッド」が流行しそうだと思っていたら、
        暖冬のせいで「スカイブルー」の方に人気が移ったとしましょう。

        大急ぎでスカイブルーを増産するため、毛糸を染める段階から
        製造工程を変更しなければならないのですが、
        工場のあちこちに大量の「ワインレッド」の仕掛品が存在し、
        その処分をどうするかということが大きな問題となります。

        このような予期せぬ事態が起きても簡単に対処できるよう、
        ベネトンは「白の毛糸で編んだ後、所望の色に染める」というように、
        製造工程を逆にすることにしました。
        すなわち、色のついていないセーターを大量に在庫しておき、
        「顧客が欲しがっている色のセーター」をタイムリーに
        市場に投入するという方法で大成功したのだそうです。

         メーカーの開発リーダーである皆さんは既にお気付きだと思いますが、
        単純に「編んだ」後で「染める」といっても、
        セーターになった完成品を染めるということは、糸を染めるのとは異なり、
        例えば「腋にあたる部分」と表面積の大きい「胸や背中の部分」を
        同じ色に染め上げるためには(染めムラを起こさないためには)、
        セーターのデザインを変えないで染められる工夫をしなければなりません。
        また、染色工程に使用する「工具」なども改良しなければなりません。

        SCMは「供給連鎖活動」と訳されているように、
        顧客に届けるまでの工程すべてを見直して最適化をはかることを
        目的としていますので、ややもすると「物流(ロジスティック)」の
        ことだと思われがちですが、真のSCMを実現する鍵はベネトンの例で
        お分かりのように、「開発・設計段階」にあるということです。

         開発リーダーこそが、SCMの真の「こころ」を理解しなければ
        実のある「改革」はできません。
        開発リーダーは、商品が顧客の手に渡るまでの全工程を把握した上に、
        市場の原理(セーターの場合だと、顧客の心変わりに対する対応)まで含めた
        製品開発のテーマを設定し、それを成し遂げなければ
        激烈な競争には勝てないということです。

        ややもすると、開発リーダーは製品のスペックのみに目が奪われがちです。
        製品スペックで他社を凌駕することは必須条件ですが、
        十分条件ではありません。

        顧客心理や行動パターンを徹底的に解析し、それを開発テーマに具現化できる
        「幅広い感性を持った開発リーダー」になりましょう。
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