目次へもどる

      研究開発リーダーの参考書06

      技術の世界にも「温故知新」は存在する
 
       小学生のころを思い出してください。
      初めて顕微鏡を通してミクロの世界を見たときの感動を覚えていますか?
      葉っぱの葉脈とか、蝶々の羽の燐粉(リンプン)とか、
      果ては消しゴムのカスとか、ノートの紙の表面とか・・・、
      楽しい思い出がよみがえってきませんか。

       大昔の顕微鏡の技術が、最先端技術の半導体ステッパー(半導体製造装置)
      に応用されだしたということをお話しましょう。

      ものを拡大して見るのは虫眼鏡ですが、2枚以上のレンズを使ったタイプの
      顕微鏡は16世紀の末頃、発明されたといわれています。

      何故、拡大して見えるかという原理ですが・・・
      (チョッと専門的になりますが、みなさんは技術者のリーダーですから
      我慢して読んでください)。
      どこまで分解能があるか(すなわち細かい部分を見ることができるか?)
      という尺度に、顕微鏡の場合は「開口数」という数値を使います。

      開口数すなわちN.A.(=Numerical Aperture)は、
      以下のような関係になっています。

      N.A.=n×sinθ・・・[1]式
      (nは対物レンズと被測定物の間に挟まれている物質の屈折率)
      (通常は空気ですから“1”です)

      次に、どこまで細かいものを見ることができるかという指標の分解能は、

      分解能=0.61λ/N.A.・・・[2]式
      (λは使われている波長で、太陽の光や電灯の光の波長ということになります)

      すなわち、分解能をあげるためには[2]式の分母であるN.A.を大きくすれば
      いいことが分かります。
      次に、N.A.を大きくするためには、[1]式の“n”を大きくすればいいことに
      なります(ここではsinθは一定と想定して考えてください)。


       さて、最先端技術のひとつである「半導体プロセス」は
      高集積化の歴史でもありました。
      (高集積化:同じ面積のICチップの中にできるだけ多くの素子を
      詰め込むこと=できるだけ細い線を描けるようにすること)

      この高集積化のために、半導体ステッパーは[2]式のλ(波長)を
      短くすることで(小さくすることで)性能をあげてきました。

      一方顕微鏡の世界では、大昔からプレパラートとレンズの間に
      水(n≒1.33)やオイル(n≒1.52)を入れて性能アップせていました。

       技術者である皆さんは、すでにお気付きのことでしょう。
      「  そうです!、間になにか入れるのです。  」

      レンズとウエハーの(顕微鏡でいえばレンズとプレパラート間)
      間に「純水」を入れるだけで、性能が1.4倍にアップするのです。

      最近、以上の原理を使って性能を1.4倍にアップさせた、
      1台、数億円もする半導体ステッパーが発売されました。

       以上のとおり、大昔の技術も最先端技術に十分役に立つということです。
      「温故知新」も馬鹿にはできません。
      ときどき、古い技術も「原理に立ち戻って」見直してみましょう。

                         
Copyright (C) 2004 Masaki Konishi. All rights reserved.