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      研究開発リーダーの参考書03


      物理現象が同じでも開発対象物(製品)が異なると、
                        開発アプローチはまったく異なります


        最近はやりのディジタルカメラ、そのキーパーツ中のキーパーツは
       受光素子のCCD(一部CMOSが使われていますが)でしょう。
       半導体メモリーで米国に追いつき・追い越し、世界のトップに立ったのも
       つかの間、台湾・韓国に追い落とされた半導体業界ですが、
       受光素子の分野では今でも健在です。

       半導体シリコンは「光を電気に変換する」という能力を持っています。
       大昔(読者の皆さんが生まれる前)開発された銀塩フィルムを
       CCDに置き換えて半導体メモリーを付加したのがディジタルカメラで、
       仕組みは簡単、無数の「光電変換素子アレー」をならべ光を電気に変換し、
       その一個一個から出てくる電気信号をメモリーに溜めるという方式です。

       性能・コストの観点から、この一個一個のセルは非常に微細に作られており、
       なおかつアナログ素子であるがゆえに、イチゼロのディジタル素子
       (メモリー素子)では、想像もつかないようなS/N比を要求されます
       (注:S/N比とは信号とそれを乱すノイズの比率)。

       少し補足しますと、ノイズが大きいと必要な信号(明るいのか暗いのかという
       信号/輝度信号といいますが)の信頼度がいちじるしく落ちます。
       そのため素子設計上の工夫はもちろんのこと、製造現場においては
       不純物をゼロにすべく涙ぐましい努力を行います。
       すなわち、少々のノウハウでは歩留まりよく作ることは出来ず、
       設計のノウハウだけでなく高度なスキルを持ったオペレーターを必要とします。

        さて話は変わりますが、環境意識の高まりを受けてディジタルカメラと
       同じくらい急成長している商品に「太陽電池」というものがあります
       (成長率はデジカメ以上かも知れません)。
       太陽電池も「光を電気に変換する」という物理現象を利用した素子が
       使われています。
       しかも現在最も多く市場に出回っている素子は、CCDに使われている材料と
       まったく同じシリコン材料で作られた太陽電池がほとんどです。
       すなわち、物理現象はまったく同じなので、原理を解析する技術者は
       同一メンバーでこと足ります。

        ここで両者を比較してみましょう。
       まず大きさですが、現在主流の3メガピクセルクラス(300万画素)の
       CCDの場合、1/3インチ〜1/4インチの素子が使われています
       (CCDの画素の大きさは対角線の長さで表現されています)。

       一方、太陽電池は(いろいろありますが)1m×1.2mくらいが標準的です。
       単純計算で太陽電池の大きさは、CCDの約3万倍の面積です。

       一方、面積あたりの現状の製造コストでは、太陽電池がCCDの1/1,000〜1/2,000の
       コストになっているようです。

        以上のご説明で聡明なる読者の皆さんは、すぐにお分かりでしょう。
       物理現象が同じでも、目的とする製品に合致した
       「設計から製造プロセスまで」について、まったく異なった開発コンセプトを
       構築し、開発グループをリードしなければ、製品開発自体が成り立たないこ
       ということにお気付きでしょう。

       開発リーダーは、まず開発すべき対象を明確にしなければなりません。
       技術領域が同じでも、対象が何かを「しっかりと把握」する必要があります。
       その目標を達成するためには何が必要かを取捨選択することが、
       開発リーダーの重要な役割の一つです。
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