4回  やってみなけりゃ分からないでは困ります               目次へもどる

世の中には「やってみなければ分かならい」ことがたくさんありますが、企業活動における研究開発は計画通り進めなければなりません。とても無理難題のように聞こえますが、企業にとっては必要なことで当たり前のことです。企業の中で研究開発を進めるためには、この相反する事象をどのように乗り越えればよいのでしょう。

私は企業内で行われる研究開発を「研究」と「開発」に分離して捉えると分かり易いと考えています。すなわち「研究」とは誰もやったことがない、まだ世の中で確かめられたことがない事象にチャレンジすること、一方「開発」とは製品を仕上げるために、どの項目にも不具合がないように仕上げることだと考えてはどうでしょう。大学では必須科目を一科目でも落とすと進級できないのと同じように、お客様に買っていただく商品は一か所でも不具合があってはなりません、これが「開発」に相当する部分です。また、大学は低空飛行でも卒業できますが、商品の場合はコンペチターが存在するわけですから、他社にはない特徴がなくては売れません。その特徴付けのために「研究」が必要なのです。したがって企業がチャレンジする研究テーマは、大きさを半分にするとか、処理スピードを2倍にするとか、価格を半分にするといったような、世の中があっと驚くような要素研究でなければ意味がありません。さらに重要なことは現行製品との比較ではなく、発売時期のコンペチターの製品に比べてということです(例えば発売時期には市場価格が現在の半分になっていると考えられるなら、研究テーマは現行価格の1/4がターゲットということになります)。

とんでもなく難しいテーマ、やってみなけりゃ分からないようなテーマ、そんなテーマを時間通りに仕上げるのは無理だとお思いでしょう。その通り無理なものは無理なのです。しかしチャレンジしなければコンペチターに勝つことはできません。そこで、研究開発のステップを3つ、すなわち「差別化検討」「要素開発」「製品設計」に分割して考えると分かりやすいと思います。差別化検討は机上検討フェイズで、チャレンジしようとしている研究項目が理論的に可能であるかどうかを確かめることはもちろん、必要な時期までにかつ求められるコストで出来そうか否かを検討します。次に研究フェイズに相当する要素開発ですが、研究期間を限定することが重要です。首尾よく完成できると製品化設計に進みます。このフェイズ(開発に相当)まで進むと一般的な日程管理手法のPERTProgram Evaluation and Review Technique)や、仕事の分担を明確にするWBS/OBSWork Breakdown Structure/Organization Breakdown Structure)などの手法が使えます。

さて要素開発段階で期間内に思わしい結果が得られなかった場合どのようにすればよいのでしょう。事業の傷を最小限に食い止めなければなりません。そのためには要素技術にかかわっていたリソースを製品設計のグループに併合し、他社よりも早く通常の新製品を発売することが不可欠です。応急対策で売り出した新製品は製品寿命が長くありませんから、新規蒔き直しで要素検討に再チャレンジです。研究開発リーダーの役目は臨機応変に状況に対応することであって、「あと少し、あと少し」と続ける愚をおかしてはなりません。

研究は百発百中である必要はなく、失敗したときのマイナスを最小限に抑え次の機会でとりもどす「三勝二敗」、しかし開発は「百戦百勝」、そんな研究開発リーダーになって欲しいと願っています。

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