2回  明確なターゲットが成功の鍵               目次へもどる

日本でもおなじみのプロクター・アンド・ギャンブル社(P&Gといった方がわかり易いでしょうか)は年間売上8兆円の大企業です。2000年にCEOになったラフリーは自社の研究開発の成功事例を調査していて面白いことに気がつきました。組織を超えてアイディアを融合させたものや、社外との連携によって開発がおこなわれたものの方が、社内のR&D部門単独で開発したものより成功確率が高いことを発見したのです。自分たちが進めようとしている目標が明確でなければ、バックグラウンドが異なったメンバーにお願いしようとしているポイントが伝わりません。ラフリーは「協業によるR&Dテーマ」の比率を増やすことによって、ヒット商品を生み出す確率を高めました。

ラフリーの話は、R&Dの成功確率を高めるために、目標が明確であることがいかに重要であるかを示した具体的な例だと思います。ではどのようにすれば明かな目標をチーム全員で共有し続けることができるのでしょう。ソフト開発の世界には「プロジェクト憲章」というツールがあります。開発プロジェクトが目指すターゲットやゴールなどを明記したチーム全員の「道標(みちしるべ)」です。プロジェクト憲章には、プロジェクトの名称、なぜ行われるのか、具体的な最終目標、成果物、予算、納期、完了条件、組織とメンバー、チームの運営ルールなどが書かれてあります。

さてターゲットが明確で、日々の行動内容が規定されていて、目標に向かって前進しているだけで、チーム員の心は満たされるでしょうか。
 1961525日、当時のアメリカ合衆国大統領J.F.ケネディは、議会で歴史的な演説を行いました。我々は60年代が終わるまでに、月へ行くという困難であるが故の選択をした。人類発展のために、我々は38万キロ彼方の月に向けロケットを打ち上げる。ロケットは新しい合金で作られ、精巧な時計よりさらに精密な技術で組み立てられる。人類の歴史上最も危険で最も大規模なこの冒険に、神のご加護があらんことを。
 これほど大きな目標でなくても、開発リーダーは「使命」を明確に示さなければなりません。ケネディの演説でいえば、「60年代に月へ行く」という具体的なターゲット、「人類発展のため」というプロジェクトの大きな使命、そして「新しい合金、時計より精密な技術」という乗り越えるべき具体的な開発目標が、明確に示されています。

長期的ではあるけれど心躍る使命を背景とした具体的な目標とその進め方を明示すると同時に、日々の進め方を(こちらは更に具体的に)共有することが開発チームを成功に導く鍵ではないでしょうか。

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