1回  若手社員には軽い仕事をたくさん与えよ               目次へもどる

新入社員の教育方法についてよく議論がなされますが、私は新入社員には「重要な仕事に就かせないこと」だと考えています。どこの企業でも同じだと思いますが、重要なプロジェクトには人事部門が率先して優秀な新入社員を配属してくれます。配属された新入社員も最初は意気揚々と仕事に取り組むのですが、1ヵ月もしないうちに元気がなくなります。社運を左右するような仕事であればあるほど、仕事の進捗状況をチェックしなければなりません。ひどい場合は箸の上げ下ろしに至るまで指示をしなければなりません。自主性を失い、元気がなくなり、23年も経つと普通の人になってしまうのが一般的です。
 一方、多くの超一流ではない新入社員はルーチン業務を行っている一般的な部門に配属となります。職場にもよりますが、多くの場合「誰かの手伝い」とか「寸断された」仕事を担当させます。しかしよく考えてみますと、このような細切れ仕事はチェックも甘く、多くの場合は任されていることがほとんどです。知らず知らずのうちに自主性が芽生え、自分で仕事の計画を立てられる人材を育成していることになります。

企業マンとしてノーベル化学賞を受賞した「田中耕一さん」は新入社員としてどのような教育を受けたのでしょうか。田中耕一さんを新入社員として迎えた当時のチームリーダ(Aさんとしておきましょう)にお聞きした話です。当時のAさんは、Aさんを含む4人のメンバーで「ある機器」の開発に取り組んでいました。そこへ新入社員として田中さんが配属されたのです。すでに原理確認のためのプロトタイプ機はできていましたから、Aさんは田中さんに開発中の装置の評価を命じました。田中さんが入社した(株)島津製作所は、計測機器や医療機器を開発・製造・販売している会社です。力があればある程、新しいメカニズムの研究や新しいプロセスの開発をやりたいはずです。Aさんはチームで仕事を進めることの大切さを田中さんに話し、田中さんもそれを理解しコツコツと解析の仕事を進めたようです。
 ノーベル賞に選ばれる人は、一番はじめに発見・発明した人であって、その分野での権威者であるかどうかは考慮されません。田中さんの受賞理由は質量分析のためのソフトレーザー脱離イオン化法を開発したことだそうですが、開発途上の新製品の性能チェックから生まれたところに意義があるように思えます。

 メインストリームでなくても重要な仕事はいくらでもあると真剣に説得したAリーダーと新入社員の田中さん、どちらも素晴らしい人たちですね。

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