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第9回 P&G社とプロジェクト憲章
 
 プロクター・アンド・ギャンブル社(P&G)は、洗剤・紙おむつ・ヘルスケア製品などを製造販売している会社で、年間売上8兆円の大企業です。
 それでもP&Gは年率5%の成長を目標に掲げています。たった5%の伸びといっても売上8兆円の規模ですから、年間4000億円の売上増を達成しなければなりません。
 当然のことながら現行製品の拡販だけではなく、多くの新規事業を立ち上げなければ4000億円の売上を上乗せすることはできません。

 2000年、CEOになったラフリーは、売上の増加を上回る勢いで増え続ける研究開発費にメスを入れました。彼の卓越したところは、研究開発費を抑えるのではなく、過去の成功事例を徹底的に調査したことです。
 調査の結果、素晴らしい成果をあげている大半が、組織の壁を超えてアイディアを融合させたものや、社外との連携によって開発が行われたものであることを見出しました。
 そこでラフリーは、新製品の半分をP&Gの研究所単独ではなく、他社や大学などとの共同開発によって実施するよう方向転換しました。

 ソフト開発の世界には「プロジェクト憲章」というツールがあります。開発プロジェクトが目指すターゲットやゴールなどを明記したチーム全員の「みちしるべ」です。
 プロジェクト憲章には、プロジェクトの名称、なぜ行われるのか、具体的な最終目標、成果物、予算、納期、完了条件、組織とメンバー、チームの運営ルールなどが書かれています。

 自分たちが進めようとしている目標が明確でなければ、そして相手(パートナー)に求めようとしている内容が明確でなければ協業は成り立ちません。
 異なる企業文化の中で育った技術者同士が、共通の目標、共通のルールで、お互いに業務を分担しなければならない協業にとって、プロジェクト憲章は絶好のツールといえるのではないでしょうか。

 P&Gがプロジェクト憲章を使ったかどうかは分かりませんが、他部門や他社と協業するために、研究開発の目標や開発項目の分担を明確にし、完成までの時間管理を厳格に行ったことは容易に想像できます。
 協業のいい側面を最大限に引き出し、大成功したP&Gの優れたところを学んで欲しいと思います。